家族と自分のための認知症 誰も知らない新治療

2015年8月4日

kawanami
筆者:川並汪一氏(かわなみ・おういち)
日本医科大学卒。
同大学老人研究所所長、北京中医薬大学東方病院客員教授など歴任。
新宿漢方クリニック院長。
日本医科大学名誉教授。

Ⅰ 高齢社会の目覚ましい潮流

2015年の日本における認知症の人は462万人、予備軍が400万人です。団塊世代が後期高齢者になる2025年には700万人に達する予想です。
そこで読者の皆さまにお尋ねします。

【問1】高齢化へのスピードは「日本が世界で断然トップ」と信じますか?
【問2】日本の介護現場はアジア諸国と比べ給料も高く人材を引きつけますか?

回答はどちらもNOです。
アジア諸国の高齢化と成長速度は想定外で、日本をしのぐ勢いです。政府による介護国際戦略にもかかわらず、フィリピン、インドネシアから勉強に来た介護人材は台湾へ流れつつあります。数年後には中国の高齢者人口は日本の総人口を上回り1億4千万人に達します。日本では高齢者介護の人材が容易に育たず、利潤の乏しい介護現場から医療関係者も離反しかねません。
現実世界では、歴史の新しい鳴動が押し寄せています。金融経済界では、これまで日米中心で運用されてきたADB(Asian Development Bank)に対し、中国を主軸としたA I I B(Asian Infrastructure Investment Bank)が世界57か国を味方にしました。世界政治の中軸が変動する予兆であり歴史が転換しつつあります。この局面で日本も身の振り方を考え直しつつ、「クオリティの高い日常生活」をさらに深く追求することが望まれます。

Ⅱ 忍び寄る老年症候群と認知症

私たちの身体はゆっくりと、徐々に速度を上げて「老化の階段」を駆け下ります。目がかすみ、耳が遠くなり、歯が傷み、皮膚の皺に戸惑いが募ります。避け得ない運命の摂理でしょうが、急いだときの不覚の転倒、緊張時の失禁など、「予期せぬとき、予期せぬところで、予期せぬ症状が出る」のは何とも悔しいものです。自分の人生の「誰そ彼(たそかれ)」を誰しもが自覚することになります。
この「黄昏どきの老年症候群geriatric syndrome」は、腰・関節痛、肩こり、目のかすみ、難聴、せき・たんなど多彩です。同時にもの忘れが進み、それによる失敗が繰り返され、取り繕いが間に合わなくなってゆきます。誰もが同じ認知症プロセスに至るわけではございません。しかし、高齢者の4人に1人は自制の壁が外れ「恍惚の人」(有吉佐和子)のレベルに至ります。「認知症の周辺症状」( BPSD;Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)といわれる異常行動の発症です。このレベルで病院外来に見えますが、その時は最初の兆候から8~9年経過しています。この遡る8年前が早期発見すべき時期で、その時こそ認知症予防を始めるべきだったのです。
高齢者は一般に罹患する病気が単一ではありません。厚労省白書(平成22年)によると頻度の高い疾患(高血圧、糖尿病、脂質異常症、狭心症、骨粗しょう症)ほど日常の生活振りが深く関与します。不摂生が積み重なると老年期に一挙に病気が露呈します。認知症の多くは生活習慣病が基盤となります。ですから認知症予防の基本は、今の生活(食生活やリクレーションの習慣)をチェックし修正することがスタートラインと心得るべきです。ところでこの厚労省白書には「認知症」という病名が見当たりません。それは「認知症」とは実は独立した単独の診断名ではないためです。たとえば高熱、腹痛、頭痛などと同じで、これらの背景にはインフルエンザ感染、胃腸炎、くも膜下出血など多彩な病気が存在します。認知症とは、もの忘れとその続発症により生活に支障の出る症候群の一般名称です。その代表がアルツハイマー病で、次に脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症(ピック病)そして治る認知症などで構成されます。

Ⅲ 認知症(症候群)をもたらす四大疾患

1 アルツハイマー型認知症
「はじめチョロチョロなかパッパ 赤子泣くとも蓋とるな」

アルツハイマー型認知症の症状は、ご飯を薪で炊くときの火加減パターンで進みます。最初はもの忘れがチョロチョロと気づかぬ内に進みます。蓋を開けずに我慢している間にご飯がしっかり炊きあがるように、あるときハッと気づくと周辺症状がしっかり出来上がっているようなもので、後戻りは不可能です。脳内には歳と共にアミロイドβとタウ蛋白という物質が多少とも出現しますが、神経組織に異常に沈着して神経細胞が変性し萎縮するとアルツハイマー病になります。アルツハイマー病は脳の20年にも及ぶ加齢に伴う変性疾患といえます。神経細胞の異常はやがて脳全体に波及し脳がすっかり萎縮します。とくに記憶を統括する海馬の萎縮は比較的早くから明らかになります。以下に認知症の典型的な症例をご紹介します。
(一部文科省委託事業・多職種連携教材より転載)

【事例】もの忘れの進む79歳女性
tsukimi170歳頃よりもの忘れが出てきた。75歳に実姉が他界したのを契機に、精神的に落ち込みが激しく老眼鏡を置いた場所も分からなくなった。昔話など同じ話を何度も繰り返すようになった。一方で、新しい出来事や約束を忘れ、そのことを問いただすと作り話をしてごまかすようになった。通常の顔つき動作などにあまり大きな変化を感じなかった。
tsukimi2
しかし、外出先で出会った近所の友人を思い出せず、洋服を着ることもできなくなり、突然、「自宅に帰ります」と旅行鞄を取り出し洋服を詰めるような動作が出現した。78歳ころより食事をしたことを忘れ、料理をしても鍋の空焚きをし、買い物に行くと同じものを大量に買ったりするようになった。tsukimi3最近では、道に迷い警察に保護されることもあり、失禁もしばしばみられるようになった。MMSE=14(満点30の認知能検査;mini-mental state examination,24点未満で認知能低下を示す。)でHDS -R=12(満点30の長谷川式簡易知能評価、24点が境界)と基本的日常生活動作(ADL;activities of daily living)の支障により介護が必要な中等度のアルツハイマー型認知症と診断された。初期もの忘れから約9年を経て来院したことになる。

2 脳血管性認知症
「知らぬ間にラクナ梗塞認知症」

長期の喫煙、飲酒など不摂生を伴う生活習慣からくる高血圧、糖尿病、心房細動、虚血性心疾患、肥満、脂質異常症はとくに血管性認知症のリスク因子です。脳血管障害(脳出血、脳梗塞)に罹患した患者さんは、後遺症として手足の運動障害や麻痺が表れ、呂律が回らず食事の呑み込みも悪くなります。いわゆる中気を起こした患者さんはときにアルツハイマー病と同様な症状を現わします。一方、頭部MRI検査で深部白質領域(皮質下)を中心に出現する虚血性変化ラクナ梗塞がみられます。この病変は日本人で一番多い脳梗塞タイプで、脳の深い部分の細動脈が詰まって出現しますが、症状を出さないので無症候性脳梗塞といいます。朝起きたら何の前触れもなく手足のしびれや言葉が出にくいことで気づくことが多いので隠れ梗塞ともいい、突然アルツハイマー型認知症様反応を示します。
血管性認知症は一般にアルツハイマー病よりも予後が悪く、卒中発作が重なるほど悪化が加速され、寝たきりとなります。麻痺による嚥下障害、尿失禁、便失禁などを認め、根本的な回復は難しく認知症発症から数年で亡くなる傾向があります。脳卒中発作の再発は、認知症の悪化を促進するので、ただちに生活習慣を改め必要な治療をすることが重要です。生活習慣病の予防は、アルツハイマー病、脳血管性認知症の発現を抑止するのに最も重要で不可欠の予防・治療法とみなせます。

【事例】高血圧で治療せずに過ごしてきた76歳女性
tsukimi420年来、高血圧を指摘されているが症状もないので未治療のまま過ごした。1年ほど前から徐々に口数が少なくなり、話の内容がとんちんかんで会話が成り立たなくなった。最近になり家事をせず、庭でじーっと座っていて、ときに部屋への出入りを繰り返し、タンスを意味なく開け閉めするなど目的の無い行動が頻繁に認められた。洋服の着脱や入浴することもできなくなった。数日前に、庭で放尿しているのを近所の他人に目撃された。診察すると表情に乏しく、軽度の構音障害と四肢の筋の強張りを認めた。小刻みで引きずるような歩き方をした。MMSE=12で、途中から検査の施行を拒否する様子も見られた。頭部MRI検査で前頭葉の深部白質領域(皮質下)を中心に多発性ラクナ梗塞を認めた。典型的な脳血管性認知症に相当する。

【事例】脳卒中から奇跡的回復の40歳ボディビルチャンピオン
アメリカの元ボディビルチャンピオン(D.Dearth)が突然脳出血発作で右半身の機能を失ったが奇跡が起きた(9000 needles.comを参照)。
集中治療とリハビリセンターで十分な治療が出来ず、藁をも掴む思いで天津中医薬大学・石学敏教授(後述する三焦鍼法Gold-QPD共同事業者・韓景献教授の前任者)の醒脳開竅法(せいのうかいきょうほう)という鍼治療を受け、奇跡的に回復したという全米で有名なドキュメンタリーです。
「醒脳開竅法」といわれる鍼治療は脳卒中急性期(早いほど良い)に施行することで障害された知覚麻痺が改善し意識が明瞭になる。この施術で脳血液循環が回復、代謝が亢進、神経系が活性化することは既に多くの例で明らかになっている。

《認知症対応型G o l d -Q P D Sanjiao Acupuncture(三焦鍼法)への橋渡し》
鍼による身体への刺激が、患者さんの脳機能改善に良い効果をもたらす事実より、韓景献教授は、独自に健康長寿の効果を示す6穴9鍼の特別の経穴を見出した。それはかなり強い刺激を与える「醒脳開竅法」に対し、穏やかな刺鍼であり広く応用可能である。脳卒中後の認知機能改善とアルツハイマー病に役立つ事実を400名以上の患者さんで確認し、さらに動物実験で医学的・科学的に証明した。この施術法が日本人の認知症周辺症状の緩和にきわめて効果的であることを、わたしども独自に検証することに成功した。その結果、韓景献教授と合意の上で、この施術を「三焦鍼法」(Sanjiao Acupuncture)と命名し、認知症治療に応用するため認知症Gold-QPD育成講座を設立した。講義は認知症の西洋医学、中医学の鍼灸、そして介護福祉領域で構成される。毎年開催し今年で7年目となる。これまでにGold-QPD鍼灸師として91名を送り出し、認知症予防とその周辺症状の緩和に全国各地で努めている。格別の効果を示すことで昨年度は文科省の委託事業として、Gold-QPD講座の教材を基盤とした多職種連携教材を作成し全国の鍼灸関連機関に配布したところである(後述)(http://gochojunet.com)。

3 レビー小体型認知症
「幻視で始まり手足の震えのレビー小体」レビー小体型認知症は、日本の精神科医小阪憲司(1976年)により見いだされ、今や世界的に有名な認知症に位置付けられています。レビー小体とはパーキンソン病で発見された脳幹部の病的封入体で、この疾患では大脳皮質全体にたくさん認められます。アルツハイマー型認知症と異なり、初期から記憶障害よりも、“天井の壁に虫が這っている”、“子供が炬燵の向こうに座っている”などの幻視が出現するのが特徴です。パーキンソニズムという手足の震え、歩行障害、筋固縮などの障害と気分の変動(穏やかな状態から無気力、興奮、錯乱)を繰り返し人格が変わってしまう。この患者さんは薬剤に過敏で、気分や震えを落ち着かせる向精神薬、抗パーキンソン病薬は、運動症状や精神症状を増悪させるので調節が困難です。

【事例】存在しない子供の姿が見える転びやすい75歳男性
tsukimi5妻と長男夫婦、孫2人と同居。公務員を定年退職後は仕事には就いていない。既往歴に特記すべきことはなく、常用薬はなくまた非喫煙者でアルコールは少々。もともと登山が趣味であったが、1年ほど前より歩く速度が遅くなり転びやすくなって最近は自宅にいることが多くなった。時々ぼーっとして話が通じなくなった。一方ではっきり会話が成立することも多いのでそのまま様子をみていた。夜になると、「寝室のベッドの脇に知らない子供が座っている」、という幻視が出現して外来を受診した。初診時、この患者は口数が少なく表情の変化に乏しく仮面様顔貌で、四肢の筋肉が強張り動作は緩慢で、歩く姿は前屈姿勢で遅く小刻みであった。認知機能検査では、MMSE=19と低下し頭部MRIでは、内側側頭葉の萎縮が軽度で脳血流SPECTで後頭葉皮質の血流低下を認めた。
レビー小体型認知症では歩行障害が病初期より出現し、幻視は繰り返されることが多く、体験中に本人も幻視であると分かっていることが多い。この疾患の進行はアルツハイマー病に比べて速く、発症後の平均生存期間は7年未満である。

4 前頭側頭型認知症
「粗暴なふるまい落ち着かず人格障害ピック病」

初期から粗暴、短絡的で相手の話は聞かずに異常行動(浪費、過食・異食、収集、窃盗、徘徊、他人の家に勝手にあがる)と人格変化が著しい。アルツハイマー病でみられる中核症状(記憶障害・見当識障害など)は余りみられない。ピック病とも云われるこの前頭側頭型認知症は、ひねくれた態度が目立ち意味もなく同じ言葉を繰り返し、同じ行動を繰り返す滞続症状が特徴といえます。脳画像診断によれば前頭葉・側頭葉に局所性の萎縮や血流・代謝低下を認めます。治療法はなく落ち着きのなさ、多動、徘徊などに対し抗精神病薬を使うことがあり、ついには精神病院入院を余儀なくされます。高齢者施設ではこの反社会的な行動に対し、残念ながら拘束せざるを得ないことになります。新聞紙上で虐待行為と云われかねない状況であり、殺人事件に発展することも今ではしばしばニュースになります。

【事例】注意を聞かず落ち着かない75歳女性
tsukimi6夫と二人暮らし、55歳で右乳がんの手術を受け再発の所見なく70歳以降は通院を終了した。そのころから何となく落ち着きがなく徐々に自発性が低下した。73歳頃より、毎日一人で勝手に外出し、近所の家に入り込むようになった。注意しても、適当な返事をするばかりで、悪びれた様子はなく、夫は深刻に悩むようになったが病気とは思えなかった。その後、とくに甘いものを好むように食事の嗜好が変化し量が増え体重が増加した。75歳時に、他人の畑から勝手に野菜を持って帰り警察に通報された。「自分はどこも悪くない」と夫には不機嫌な態度を示し、診察にも非協力的で、質問に対してまじめに答えようとせず、すぐに立ち上がって診察室から出て行こうとする様子が頻繁に見受けられた。デイサービスやショートステイの準備もしたが本人が完全拒否でうまく機能しない。夫の忍耐も限界に達し要介護Ⅲが認定され施設入所。患者は毎日同じ行動パターンをとる習性があるので、それを応用しルーティン化できると、ケアもある程度可能となる。精神科病院とも連携を図りながら、各業種の担当者と協議しつつ適切な方法を探っていく必要
がある。認知機能検査はMMSE=22、HDS -R=19であった。

5 治る認知症
「外傷、腫瘍、甲状腺これらを治せば認知は治る」

当初から記憶障害が前面に出るアルツハイマー病とその他の認知症は、基本的に進行性病変であり、治癒することは望みがたい。認知症の中で明瞭に治癒するケースもかなり認められる。たとえば外傷後に起こる慢性硬膜下血腫による認知症、正常圧水頭症、脳腫瘍、甲状腺機能低下症、慢性アルコール依存症、ビタミンB12欠乏症、薬剤副作用などはそれぞれ外科手術、投薬、断酒そして栄養障害の治療などにより認知能の回復治癒は可能である。そのためには適切な診断と処置が望まれる。

Ⅳ 精神科の医療現場から一言

1 暴力的な認知症患者さんへの対応
認知症患者さんは、手に触れたり近づいたりして親しい関係を築くことで信頼感が生まれます。この初期対応はとくに鍼治療に際しては絶対不可欠のプロセスです。しかし興奮し暴力的周辺症状を示すような患者さんは逆に、言葉でアプローチすることが必要です。
tsukimi7(1)危険物を取り除く。ネームプレートやネクタイをはずし、胸ポケットのペンやはさみなどを出しておく。
(2)殴られ、蹴られるのを防ぐため腕二本分の距離をあける。手を添えると攻撃と勘違いされ興奮がひどくなるのでタッチングをしない。
(3)武器を隠し持っていると勘違いされることがあるので両手は相手に見えるようにしておき、凝視することは避け大事なときだけ相手をみる。
(4)笑顔は嘲笑され馬鹿にされていると思われる可能性がある。腕組みもしない。
(5)ゆっくりと声のトーンを下げて相手に理解できるように話す。
tsukimi8(6)発言を批判するようなことは避け、「…と言っておられますが、それでよろしいですか?」のように相手の言葉を繰り返す。これだけ気をつけるだけでも、興奮はしずまることが多い。

2 高度の周辺症状に誰がどう対処するか
厚生労働省は認知症になっても住み慣れた地域で暮らし続ける社会の実現をめざしているようです(認知症施策検討プロジェクトチーム認知症施策の方向性 平成24年6月18日)。徘徊など周辺症状への対応に関し神経内科では、「背景に不安があるから、話をゆっくり聞いて」「本人に寄り添って」などが勧められている。精神科の現場では、重度の認知症で会話は成立せず、寄り添えば暴力につながることが日常茶飯事で大きな問題です。
精神科病院では厳格に規定された法律の下で、1日に数度の診察とアセスメントを行ない、法律を遵守しながら鎮静薬投与、拘束、隔離などを適切に行い対応しているのが現状です。しかし、一般病院や施設では拘束や隔離に対して法律の規制がありません。周辺症状や譫妄(せんもう)が重度になった場合、在宅あるいは老人保健施設での管理は不可能で、家族も患者も共倒れになります。昨今、精神科病院への入院治療に批判的な意見が多いが、認知症医療においても精神科の存在は大切な資源であることも理解すべきでしょう。

Ⅴ 認知症に対する厚労省と日本神経学会の最新指針

1 「新オレンジプラン」(2015, 1, 27厚生労働省発表、http://www.mhlw.go.jp/)
目的と基本方針は「認知症の人が、自分らしく暮らしつづける環境づくり」です。
(a)認知症の啓発推進(認知症サポーターの育成)
(b)認知症の適時・適切な医療・介護等のケアを推進
(c)若年性認知症施策の強化
(d)認知症介護者の支援 介護者相談カフェの設置
(e)認知症を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進
(f)認知症の予防/診断治療/リハビリテーション/介護モデルの研究開発と成果推進
(g)認知症の人やその家族の視点の重視
これらの骨子はいまさら「新オレンジプラン」というより、むしろ従来のプランの繰り返しで、お金をかける領域が多少増えただけのようにも見えますが言い過ぎでしょうか。

2 日本神経学会の認知症に対する治療方針
(a)認知症疾患治療ガイドライン(2010)
精神神経学会、認知症学会、老年精神医学会、老年医学会、神経治療学会などの協力でまとめた治療指針です。それによると、適切なケアやリハビリを重要視しており、BPSDの薬物療法はその次に位置付けています。良いケアで生活障害を改善し、リハビリで生活能力、生活の質の向上を目指すという方針です。
(b)認知症ケアとは、
 (1) パーソンセンタードケア personcentered care(BPSDの軽減)その人らしく生きる支援
 (2)安心、充実、否定されない環境で快適
 (3)自立支援
 (4)余病併発の予防、健やかなQOL
 (5)家族と地域なじみの暮らしを継続できる環境をつくることです。
(c)認知症リハビリテーションとは脳を活性化して生活能力を維持向上させることで、
 (1)快い刺激であること
 (2)他者とのコミュニケーションを回復し、
 (3)自分の役割と生きがいを見つけ、
 (4)適切な方法を繰り返しサポートする
こと、と定義されています。
リハビリは、Cochrane Library(論文を科学的に判定する総説)で認知機能の向上効果に有意性がないといわれています。しかし日本の権威ある学会のまとめとして、「廃用化に陥るのを防ぎ、残存機能を高めることで回想法や学習などのリハビリの価値は否定できない」とまとめています。「科学的統計学的所見だけで臨床応用は出来ず、実際に貢献できる治療法は採用すべきである」と断言しています。
これは実は後述する鍼治療についても云えることです。しかし、日本の医学界の権威は鍼治療については一言も言及していません。鍼の治療効果について知らないのです。面白いことに米国国立衛生研究所(NIH)や世界保健機構(WHO)では鍼や漢方が補完代替医療として認可され、国立研究センターまで設置されています。日本の最近の医学者の眼は、東洋医学から遠ざかったまま歴史の中に置き去りにされているのです。

3 最近の治療手順のまとめ
(1)軽度から中等度の認知症:薬物療法より脳を活性化するリハビリとケア中心にする。
(2)コリンエステラーゼ阻害剤(ChEI;アリセプトなど)を第一選択肢とし、MMSE、介護者の観察に注意を払うこと。
(3)BPSDにはアロマテラピー、認知刺激療法、音楽療法、ペットセラピー、マッサージ、
(4)高度のBPSDにはChEIないし、ベンゾジアゼピン(向精神薬)や抗精神病薬を採用する。(習慣性依存性があり離脱困難に陥ることが多い。また、悪化の可能性もある。)
(5)睡眠障害:リスぺリドン(抗精神病薬)、抑肝散(漢方エキス剤の効果が認知症ではなく睡眠障害に対して初めて適用された。)
(6)うつ状態:SSRI(selective serotonin reuptake inhibitor;選択的セロトニン再取り込阻害薬)

4 認知症薬剤療法の実態
アルツハイマー病で低下することの分かっているアセチルコリン量に注目し、その低下を抑制する薬剤(ChEI;choline-esterase inhibitorアリセプトなど)を採用したところ、認知症の症状悪化が一定期間ながら抑制されました。この創薬の発想は、「病気の因果関係が少しでも分かれば、その一点から修復」を模索する現代創薬法の典型例とみなせます。実は、脳の高次機能である苦楽悲憂など感情の発現機構は未だ全く解明されていません。考えてみればもの忘れ出現がアセチルコリン不足だけで説明できるのでしょうか?妄想やうつ症状を同じアセチルコリンの増減だけで説明するのは論理の飛躍と言えるでしょう。
その背景を反映しChEIを服用する大多数の患者さんは同類の神経が分布する消化管でも機能するため、下痢、嘔吐、食欲不振などの副作用に苦しむことになります。また、向精神薬や抗精神病薬は習慣性がつよく離脱するのに苦労する患者さんが多いことで知られています。世界中がしのぎを削って研究中の臨床精神神経学が進展することで、より適切な治療法が開発されるに違いありません。それまでは有用性が高く、とくに認知症の症状緩和に有効で、副作用の少ない漢方や鍼灸などを積極的にお奨めしたいところです。

Ⅵ 認知症予防と治療(三焦鍼法(さんしょうしんぽう))

認知症Gold-QPD育成講座と資格認定制度について
一般社団法人老人病研究会
(登録商標)

ギリシャ神話のキューピッドは、黄金と鉛の矢を持っており、黄金の矢で射られた人は恋に目覚め身も心も燃え上がるという。黄金の矢を鍼に置き換え認知症患者と不定愁訴に悩む高齢者に元気をもたらす、すなわちGold-QPD鍼灸師を育成するのが当制度の目的である(2010年創設:ブロンズ・シルバー・ゴールドコースよりなり毎年開催)。
一般社団法人老人病研究会は2009年に第2回認知症国際フォーラムを開催しました。その演題「東洋医学が認知症に挑む」は大きな話題を呼びNHKエデュケーショナルでTV放映されました。そのときのゲスト韓景献教授と一緒に当法人は認知症Gold-QPD育成講座を開講しました。

1 Gold -QPD  Sanjiao Acupuncture は認知症対策に高い効果
Gold-QPD鍼灸師の体験した症例報告(2011~2014の論文)によれば、
(a)初回の鍼施術は13%の患者さんが躊躇するか拒否した。しかしじっくり話し合い打ち解けると2回目には刺鍼をほぼ受け入れ、その後は喜んで待つようになった。
(b)三焦鍼法を4~5回(週1回)続ける間に、多くの患者さんの気分はスッキリし、次第に落ち着きを示した。8回目の刺鍼を過ぎると対話が出来るようになり、家族や介護士さんを認識し、感謝の意を示すようになった。
(c)長期施術(最長160回以上)で、認知能テスト(MMSE)の低下は抑制され、認知症の周辺症状(BPSD)が改善するためQOLが著しく高められた。家族と介護士の負担が軽減するため、Gold -QPD鍼灸師は関係者にも喜ばれる良い影響を与えた。

2 認知症コンサルティングと予防・治療のため鍼灸師サイトを設定
(a)認知症の家族と本人 ⇒ Gold-QPD鍼灸師か推進本部に直接メールか面談にて「認知症関連の質問」、「認知症予防と治療」につき質問を寄せる。
(b)Gold -QPD鍼灸師 ⇒ 対象者の医療情報を総括し適切に返信、または面談する。
(c)Gold -QPD鍼灸師 ⇒ 三焦鍼法と追加配穴にて認知症予防・治療を受け持つ。(Gold-QPD鍼灸師は自己責任の下で施術を実施する。推進本部はGold -QPD鍼灸師を援助するため医療コンサルティング・アドバイスをいつでも無料で引き受ける。)
(d)連絡先の推進本部 info@tcm-kampo.com ないし携帯:080-1113-5880
〒160 -0022 東京都新宿区新宿1-29-8 公衆衛生協会ビル3F
一般社団法人老人病研究会
 認知症Gold-QPD推進本部
〔質問者~本部/Gold -QPD鍼灸師~回答〕の流れにより、コンサルティングが機能すれば適切なアドバイスが提供できます。必要であれば、本部から地元のGold-QPD鍼灸師に治療を依頼することも可能となります。このGold-QPD鍼灸師の検索サイトは5月ごろネットに登場する予定です。

Ⅶ 結語

認知症は決して他人ごとではありません。家族のためひいては自分のために必要な認知症の概要をご紹介しました。そして、西洋医学も見方を変えると、その最先端の治療法とはいえ決して万全ではなく試行錯誤が始まったばかりであることをご理解頂きました。
一方、3000年前から継続している東洋医学(中医学)は膨大な体験結果から導かれた治療法です。Gold-QPD育成講座でご紹介した Sanjiao Acupuncture(三焦鍼法)は、患者さんへの初回の施術が難しいものの副作用の無い効果の確かな治療法です。老年症候群と認知症に対し適切な手段といえます。認知症専用の漢方処方はありません。漢方薬は西洋薬と異なり診断名対応型の処方はありません。その代り五臓六腑の血流を良くし活力をもたらし、全身バランスと免疫力を付ける効果があります。現在認知症の方におすすめしている漢方は、多少高価ですが、冬虫夏草や牛黄などです。これらは担癌患者さんのQOL向上にもお勧めしています。
いざという時、お役に立てますので必要な時にはご連絡ください。

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