現代社会における葬儀環境の変化

2016年6月29日
特集

現代社会における葬儀環境の変化

株式会社 千代田セレモニー 
儀礼本部課長 大八木耕一
(厚生労働省認定・葬祭ディレクター)


 ooyagi
 現代社会における「葬儀」を取巻く環境は急速に変化しています。「拡大家族」から「核家族」へと家族構成が変化し、「家族葬」という考え方、ご自宅から葬祭会場に変わる大きな変化、自分自身の葬儀の事を考える葬儀事前相談数の増加など、多様化してきています。
 弊社は昭和40年に東京都荒川区に会員システムによる冠婚葬祭事業を目的に設立。「心のサービス」を社是に地域に密着し、人生の節目のセレモニーをお手伝いさせていただき、51年が過ぎました。現在では、東京・神奈川・山梨とサービスのネットワークは拡大し、時代の流れの中で、十人十色の想い出、式に対する考え方など様々な形があり、ご家族の方向性が変わってきています。
 今回は、「葬儀のこと」と「お墓のこと」を中心に考えてみたいと思います。
 

1. 葬儀事前相談の事
 ひと昔前は、葬儀の事を前もって相談すること自体、縁起が悪いという事で考える方々は少数でした。しかし、ここ五年で、葬儀事前相談を考えている方々は、自分らしい葬儀や、残された家族に迷惑がかからないように自分自身の葬儀を自分で段取する。また、遺影写真用に写真館にて自分撮影をするなど、急増しています。弊社では、五年前に葬儀ご相談サロンを開設(西日暮里・荒川・赤塚・橋本(神奈川)きたざと(相模原)し、累計約4500組の方々が来館、葬儀事前相談が実施されています。葬儀について知りたい事項の1位は、葬儀費用について50%。2位:準備しておくべきこと49%。3位:葬儀スタイルです。事前に相談する事によって慌てる事がなく、余裕が生まれてきます。
 全国でみた葬儀費用は、平均額は189万円。最高金額は関東地区で平均額は237万円と所変わればで、様々です。費用や規模の決定要因で一番多いのは、「親族の意見」が約5割を占め、生前の希望・葬儀社の助言、予算枠内と。また、具体的な葬儀見積書を受取った割合も61%と高い割合がでています。
 費用を大きく区分すると、①葬儀一式②通夜からの飲食接待費③寺院への費用になります。費用の決め方については、個別に組み合わせて金額を決めたが29%、家族が葬儀社との事前相談で決めたが17%、葬儀一式○○円で決めたが16%、他。徐々にではあるが、事前相談にて費用を考えていく方々が増加してきています。現在では、事前に葬儀見積りをもらい自分の事として準備していく時代にもなってきています。

2. 家族葬の事
 テレビ・新聞など、「家族葬」という言葉があちらこちらで目に、耳にする機会が多くなってきています。家族のみで行う。親戚を加えて行う。友人・知人を加えて行うなど、多種多様で、実際のところ定まった形ではなく、「家族葬」という言葉だけが先行している感が強くあります。しかし、葬儀後にいろいろ困る出来事も増えてきているようです。
 例えば、葬儀後に亡くなった事をお聞きになり、関係者と家族間のなかで「知らしてほしかった・・・」などの声や、お香典が届いたり、弔問に来られたりして、家族は家を空けられないなどの事も出てきています。
 「家族葬」の良い点・好ましくない点など、準備段階でしっかりとした家族の気持ち、供養する方向性を決めてから行う事が望ましいと思っています。

3. 葬儀会場の事
 ご自宅から葬祭場(セレモニーホール)への移り変わりは年々大きくなってきています。昔の葬儀は、町会・ご近所に中心人物がいて、葬儀の事・会場の事などを仕切ってくれる方が何所にでもいた時代。ここ近年、そのような方々はだんだんといなくなり、ご自宅での葬儀施行場所が確保できない問題や葬儀会場も多く建設され、快適性や利便性の向上により葬儀会場での葬儀が増えてきたのではないでしょうか。全国的には、葬祭会館61%、ご自宅16%、寺院8%。関東地区では、葬祭会館96%、ご自宅1.3%で葬祭会館の割合が高いことがわかります。 

4. 会葬者数の事
 公正取引委員会調査によると、ご葬儀1件に対しての会葬者全国平均は132人。都市部になればなるほど、会葬者人数は減少傾向にあります。弊社調査では、会葬者平均は40人です。
要因の一つとして、平均寿命が延びる中、仕事を引退した後の老後の生活が長くなり、仕事を通じての人付合いが年々減ってきている事や、近隣の方々との関係が希薄になり、さらには、葬儀の形が、親族だけで行う「家族葬」など小規模になり、自宅葬からセレモニーホールで行うケースが増え、葬儀を行った事を後から知る方も増加してきている事もあるのではないかと考えています。
 今後はさらに、会葬者数は減少するのではないかと思いますが、本来の故人様を送るという観点から、人数の問題だけではないのですが、疑問が残るのは私だけでしょか。諸問題はありますが、人生の中でお世話になったとか、一時代を一緒に過ごしたことや、世代が変われば父母の交流関係など、「縁」をもう一度考える時代にきたように強く思います。

5. 宗派の事
 葬儀を行う形として全国で91.5%が「仏式」であることから、時代は変化していますが、「仏式」の行為はほぼ変化がみられません。
しかし、いざ自分の宗派を聞かれると答えられない方が増えてきているように思います。代表的な仏式宗派を挙げてみたいと思います。
 ①浄土真宗②曹洞宗③真言宗④浄土宗⑤日蓮宗⑥日蓮正宗⑦臨済宗⑧天台宗⑨友人葬⑩黄檗宗⑪時宗などがあります。中でも全国的に多いのは「浄土真宗」のようです。なかなか宗派を調べる機会がないと思いますが、お墓参りやご法事の時などに調べてみるチャンスがあると思います。まずは、ご自分が何宗なのかをわかっておくと、葬儀相談の時もスムーズに進みます。

6. お墓の事
 日本人の供養観には、「魂」の供養《仏壇・お位牌》「魄」の供養《お墓》があります。古来、日本人には精神と肉体の両面に対し供養を行う考え方が定着しています。「墓地」とは、死者に対して、生きあるものが追悼を行う場所。また、「墓地、埋葬等に関する法律」という法律で管理や、埋葬方法が定められています。お墓は「祭祀財産」といい、ご先祖様を祀るために使用されるものです。また、社会問題化になりつつある墓守(はかもり)不在、管理維持の問題が高齢化により出てきています。また、将来的に年間死亡者数と墓地需要が十分に応えきれない時代が到来することは間違えありません。そうなりますと、ご遺骨を自宅で所持しているお宅が増えてきます。今では、納骨型仏壇まで出てくる時代です。お墓の形態には、①都立墓地②民間墓地③寺院墓地④納骨堂(屋内墓苑)⑤散骨・樹木葬があります。
 良い点・注意する点などが各々ありますので事前によく調べてから墓地は決定する事が望ましいです。又、近年、地方の過疎化・少子化を背景にさまざまな事情でお墓の引越し「改葬」を希望される方も増加傾向にあります。納骨堂・散骨・樹木葬もニュースなのでテレビでも話題になりつつありますが、こちらも、時代のニーズと言われてしまうと何とも言えませんが、注意する点はよく確認してくだい。
 今回は簡単に「葬儀のこと」「お墓のこと」をまとめてみました。時代の急速な流れの中で、古来儀式として執り行われてきた葬儀が変わってきた事がわかったのではないかと思います。人口減少・過疎化・高齢化・少子化・核家族化といた人口体系の変化と葬儀の形の変化が比例しているのかもしれません。

 最後に、私の思う「葬儀」「お墓」はやはり、人と人との「縁」を第一に考えた形を推薦致します。「個」になりつつある現代社会、古き良き日本人の心を葬儀だけでも残したいと考えてやみません。今からでも遅くはありません。自分なりの形をまえもって考えてみませんか。

【参考文献】
・第10回「葬儀についてのアンケート調査」一般財団法人日本消費者協会
・「葬儀サービスの取引実態に関する調査報告」公正取引委員会事務総局

【資料】
10年前と現在の葬儀の比較

【関連活動】
四季の会&京葉会共同イベント

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